「ひび」

気持ちの隠し場所

吸って吐く煙みたいだ
いつだって言葉は白く煙って
宛先を隠した
それは確かに臆病だ

潜って見上げる空みたいだ
いつだって色は入り混じって
本当は話した
それも確かに卑怯か

溢れる様子を 眺めていた

容易く伝えられるだろうか
僕じゃない誰かだとしたら
あなたじゃない誰かだとしたら
そんな想像じゃ追いつかないほど ねぇ

きっと愚問だ 分かりきった事を
問いかけて首を傾げる バカみたいだ

容易く伝えられるだろうか
目を見ずに言葉だとしたら
言葉じゃなく触れられたとしたら
そんな想像じゃ追いつかないほど

絶え間ない感情が
いつか終わるときが来ても
そこから始まる物語にあなたがいてくれれば
呆れる程 呆れる程

さよならとはじめまして

手のひらで温めた 最後にそっと頬を寄せて
確かめるように 声に出し繰り返したの

見えないままで良かった? 知らないままで良かった?
分からないや 笑ってしまうくらいに

心は透明じゃないの 濁ったり腐ったりを何度も何度も
でも、言葉は嘘じゃないの 本当の意味よ

指先で振り返った 物語にそっと栞を挟んで
また会う時は 笑顔で「久しぶり」って話すね

聞こえない方が良かった? 塞いだままで良かった?ううん
これでよかった これがよかった

心は聡明じゃないの 転んだり失敗して何度も何度も
でも、気持ちは真っ直ぐなの 本当の意味よ

まだ見えない道が
あなたまで繋がっているといいなんて
都合のいい事ね でも忘れないでね

車窓からは切り取れない風景
何処かにあなたの街があって 僕の街もある

想像から抜け出せない光景
いつかに飛ばした紙飛行機 どこまで行ったのかな

洗いざらしたTシャツと 柔らかくなったジーンズで
歩く夏の終わりまで そこで拾えたら

全て夢だったなら 良かったって思える?
思えないから生きることを選んだ
あの日 てっぺんから見た朝日より
耳を塞いだ歌声が響いた

たらればを言い出したらキリがないけれど
それが僕だったなら なんてね ねぇ

全て夢だったなら 良かったって思える?
思えないから望むことを辞めた
あの日 出会えた雨の降る夜から
ずっとあなたまで晴れていたのよ

吐いた言葉は 消えないからね
声に出すこと 迷っていたのよ

鉛筆で書いた 真っ黒なノート
これは多分 ずっと内緒よ

雲の速さとか 夜の深さとか
どれだけ日々が忙しなくとも

穏やかに暮れる毎日は
どこかにあなたが見え隠れしているから
やっと自分のものと 気付けたのよ
あなたのせいにしてごめんね

解いた問題も 消えないからね
答えを仕舞って さよならするの

時の早さとか 傷の深さとか
どれだけ日々が後ろめたくとも

幸せに眠れる毎日は
いつもあなたに想い焦がれているから
それも自分のものと 気付けたのよ
名前は付けないね 声で伝えるね

いつかが来れば なんて願うこと
これがどうしても 交わらなくとも
例えば明けない夜が やって来ようとも
隣に思い描くのは 誰でもないの

穏やかに暮れる毎日は
あなたのものでもありますようにそう祈るの
それが二人のものと 思えたらなんて
過ぎた贅沢を 噛んで笑うの

くすんだ白が好きな色だって
そう答えたら嫌な顔されたっけ
天井には映らない僕の顔が 
今笑ってる、不思議だ

蓄えた幸福なんてすぐ食べ尽くして 
でもお腹は空かなかったのに
喧騒には隠せないこの心が 
今笑ってる、不思議だ

ううん、不思議なんかじゃないってこと
自分が誰より分かっている

あといくつ夜をノックしたら 
あなたに届くでしょうか
扉を開けたとき上手く笑えるかなぁ 
そんな心配ばかり

れたー

許せなかった事もいつか
飲み込めるようになってしまうからね
この気持ちが冷めた後に
花が咲くことを祈るのよ

隠したかった事もいつか
話してしまうようになってしまうけどね
あの過去があったから今があると
思いたくはないのよ

生まれる前から知らなくてよかった
今、あなたに 出会えてよかった

夢を見たの ずっと前の夢よ
あの日から今日のことを 知っていたわけじゃないけど
今日から見たあの日を 愛したい思えたのは
あなたのおかげなのよ

託せなかった事もいつか
膝を枕にするようになってしまったとして
この頭は大きくて重たいから
それはやっぱよしておくよ

捨てきれなかった事もいつか
いい子だねって撫でれるようになって
少し皺の増えた手で頬に触れて
ありがとうと言えれば

生まれた時間はこんな夜でしたか?
覚えてないよね 僕も同じよ

嘘をついたの ずっと前の嘘よ
あの日から今日までの 道さえも嘘に思えたけれど
今日から見たあの日を 信じたいと思えたのは
僕のすべてなんだよ

話せなかった事もいつか
髪に髪を擦れて傾けるようになったとして
これは過ぎた話ね
それはやっぱよしておくよ