さよならを辿って
彼女が居なくなってから、どれくらいの時間が流れたんだろう。月へ行ったのか、好きだった木星へ旅に出たのか、行き先を聞いておけば良かったと後悔している。
「木星は神秘なの。それはもう、下手したら恋愛よりも神秘なんだから」
神秘に興味がなかった僕は、彼女が話す神秘を子守唄にしてよく眠っていた。それは仕方がない事で、僕が大好きなクラゲのことを話すと、彼女は2分で夢の中だ。それは仕方がない。
次に会えるのはいつになるのだろうか、彼女が置いていった天体望遠鏡を覗いても、姿は見えなかった。たまった洗濯物の中にはまだ洗っていない色違いのパジャマがクシャクシャになっていて、明日晴れたら洗濯をしようと決めた。
買い溜めたアロマキャンドルに火を灯して、真っ白な夜を過ごす日常を繰り返したら、きっといつか会えるのだろう。上手に初めましてを言えるように、今のうちから練習しておこうと思った。